䷪夬
夬は決断の時を扱った卦です。
卦辞
夬揚于王庭。孚號有厲。告自邑。不利即戎。利有攸往。
夬は王庭に揚ぐ。孚號べば厲きことあり。自邑に告ぐ。戎即くに利あらず。往くところあるに利あり。
夬は王の庭で不満を訴える。孚を叫べば危ないことがある。自邑には告げよ。武力に頼るのは良くない。行きたいところがあると良い。
「王庭に揚ぐ。孚號べば厲きことあり」は初九〜九五への助言。「自邑に告ぐ。戎即くに利あらず」は上六への諫言と読めます。
- 揚ぐ:
- 不満を訴える
- 自邑に告ぐ:
- 自領を言葉で治める
- 戎に即く:
- 武力に頼る
爻辞
初九

壯于前趾。往不勝為咎。
趾前めるに壯んなり。往きて勝たざるを咎と為す。
趾が壯んに進もうとする。行っても勝てず咎となる。
九二

惕號。莫夜有戎、勿恤。
惕れて號ぶ。莫夜に戎あるも、恤うる勿かれ。
恐れて叫ぶようであれば、夜に襲撃があっても憂うことはないだろう。
「惕れて號ぶ」は危うい状況を警戒できている、と見て良いでしょう。夜に襲撃は上六によるものと思われます。
- 莫夜:
- 夜
- 戎:
- 襲撃
九三

壯于頄、有凶。君子夬夬。獨行。遇雨、若濡、有慍无咎。
頄に壯んなれば、凶あり。君子は夬夬。獨り行きて、雨に遇い、濡るるがごとくにして、慍るることあれども咎なし。
頬骨が壯んになっている。凶がある。しかし君子は決断しなければならない。独り行く。雨に遇い濡れたのではないかと、怒りを買うこともあるが咎はない。
「雨に遇い、濡るる」は上六の元に行き交わった意と思われます。仲良くなったのではないかと疑われる、といったところでしょうか。
- 頄が壯ん:
- 力が入り、頬骨が浮き出している。
- 夬夬:
- 決断しなければならない。
- 慍る:
- いかる・いきどおる。心中に不満を持つ。
- 雨:
- ⚊と⚋が交わる象。
九四

臀无膚。其行次且。牽羊悔亡。聞言不信。
臀に膚なし。其の行くところ次且たり。羊牽けば悔い亡ぶ。言聞くも信ぜず。
尻の皮がなく落ち着かない。進もうにもギクシャクする。羊を牽くことができれば悔がなくなる。ただ言を聞いても信じないだろう。
九五

莧陸夬夬。中行无咎。
莧陸なれど夬夬。中行なれば咎なし。
莧陸だが決断しなければならない。中行であれば咎なし。
莧陸には諸説あります。ヤマゴボウ(湿地帯の植物。陰を好む意)や、滑り莧、莧は誤字でヤギの”萈”であるとして「萈が陸(お)どりて」(萈が飛び跳ねて)とする説もあります。いずれにしても、心乱さず中を保つことで咎を免れます。
上六

无號。終有凶。
號ぶこと勿かれ。終には凶あり。
叫んでも仕方がない。終わりには凶がある。
夬される者と見て良いでしょう。
まとめ
夬の時は上六が戎に即いた結果と読めます。
卦の全体像
上六、叫んでも仕方がない。凶。
九五、中を保って決する。
九四、落ち着かずギクシャク。
九三、独り行く。疑われても咎はない。
九二、恐れて叫ぶ。
壯んに進めば、勝てず咎。
