䷎謙
この卦を謙虚の卦として読むと内容がつかみにくいかもしれません。
「謙虚」と聞いて想像する穏やかなイメージと、この卦に出てくる「侵伐」「邑國を征す」といった言葉には、大きな違いがあるからです。
思うに、この卦の言う「謙」とは、「力があっても前に出ない」こと。そうした態度を貫くことで、結果として大きな力を扱えるようになる、としているのではないでしょうか。
卦辞
謙亨。君子有終。
謙は亨る。君子終りあり。
謙は進んでいく。君子は成果がある。
爻辞
初六

謙謙君子。用涉大川。吉。
謙謙たる君子。用て大川を涉る。吉。
謙を重ねる君子。大川を涉る。吉。
力も位もないため、自然と謙の状態にあると見て良いでしょう。
六二

鳴謙。貞吉。
鳴謙す。貞にして吉。
謙が現れている。正しくあれば吉。
謙が自然と表に現れている、といったところでしょう。
- 鳴:
- 鳥が鳴く意。表に現れている意と解しました。
※「鳴+卦名」という形は豫・初六にもあります。
九三

勞謙。君子有終。吉。
勞謙す。君子終わりあり。吉。
謙に労する。君子は終わりがある。吉。
十翼の『繫辭上傳』では、この爻について、「勞して伐らず、功有りて德とせず。」(労を尽くしても誇らず、功績があっても自分の徳としない。)としています。
力がつき、功績があってもなお、謙を保つために労を尽くしているといったところでしょう。
力がつき、功績があってもなお、謙を保つために労を尽くしているといったところでしょう。
六四

无不利。撝謙。
利あらざるなし。撝謙す。
利がないことはない。謙をふるう。
謙が身につき、力を発揮しながらも、労せず謙であれる状態かと思われます。
- 撝:
- ふるう。
六五

不富以其鄰。利用侵伐。无不利。
富めずしてその鄰以にす。侵伐用いるに利あり。利あらざるなし。
富めなくとも隣が共にしてくれる。侵伐に用いるのも良い。良くないことはない。
利益が得られなくても隣が行動を共にしてくれ、「侵伐用いるに利有り。」です。謙であることで利用できる力が大きくなったと見て良いでしょう。
※「富まずして其の鄰…」は泰・六四にも同じ言葉があり、小畜・九五には対となる言葉もあります。
※「富まずして其の鄰…」は泰・六四にも同じ言葉があり、小畜・九五には対となる言葉もあります。
上六

鳴謙。利用行師征邑國。
鳴謙す。師を行り邑國征すに用いるに利あり。
謙が現れている。軍を動かし、邑や国を征するのも良い。
力があるのに六二と同じく「鳴謙」です。六五よりもさらに利用できる力が大きくなっていると見て良いでしょう。
まとめ
前に出ないことで反発も減り、隣も共にしてくれて、結果として大きな力を扱えるようになっていく、といったところでしょうか。
卦の全体像
上六、鳴謙。軍を動かし、国を征しても良い。
六五、隣が共にする。侵伐しても良い。
六四、謙を揮う。
九三、謙を保つために労する。
六二、鳴謙。
初六、謙謙たる君子。
